7.
その声を最後に、私は神様の声がきけなくなってしまいました。
てふさんとお話しできるかもしれない。
そんなことを思って、毎日毎日、祭壇に祈りをささげて、集落での務めを果たし、てふさんとまたお話しできないかを待ちました。
でも、そんなことができぬまま、私はその一生を終えました。
8.
幾百年もの時が過ぎ、現代。
そこには、レストランのライブイベントで歌う「てふ」の姿と、それを見ている「ちこ」の姿がありました。
二人が出会ったきっかけは、ちこがライターとして生きている最中のことでした。
「てふ」は、思うように歌が歌える喜びに身体を奮わせていました。その本当の理由が魂に刻まれたものだということは、本人も知りません。
「ちこ」は「こんなに綺麗な声の人に出会えるなんて嬉しい。みんなに聞いてもらえたらいいな」と、どうやっててふさんを世の中に広められるかを思いながら、静かに「てふ」さんの声をきいています。
実は、はるか昔に好きだった歌声をきけているということは、覚えていません。
2人が時を超えて、生まれ変わりとして出会えたのは、きっと、てふさんが、人の幸せを願う祈りの歌声を聴いた、神様の償いなのだと思います。
0コメント