小説 海に呼ばれた 1

実は近々、独立開業することになったのでこのブログの方向性を

「好き勝手」用から「創作物発表の場」用に変更しようと思っています。


ストックしたお話の連載を「不定期」で行いますので、

よかったらお付き合いください。


「掌編小説」サイズなので、読んでもあまり疲れないと思います。

よろしければ、お付き合いください。


海に呼ばれた

※設定が「子ども」の目線なので、ひらがなが多いです。

読みやすいか否かは、たぶん意見が分かれます。



登場人物

碧(あお)

海の田舎町に住んでいる女の子。小学校に上がる前の年の話を思い起こしている。


りゅう

浮遊する、身体が透けて見える猫の姿をしている。触れることができて感触もあるが、何かがおかしい。


お母さん

碧の母親。基本は町外のスナックに働きにいっているため、家にいない。近所の人から「死亡説」が出ているほど、町で姿を見せない。


お父さん

碧の父親。本編ではほぼ登場しないが、漁師の為、漁船に乗って海上を漂っていることがほとんど。


私の生まれは、海辺の町。

視線を向ければ、どこまでも続く果てしない海が見える。


幼い頃の記憶にある、断崖絶壁の「あの場所」は、広大な日本海を一望することができた。

雄大でどんな悩みも吸い込んでくれそうな「あの場所」が、私は好きだった。


ある日、6歳になる前の私は、「あの場所」…海に呼ばれた。


わたしは、ほっかいどうにある「いなか」の、海があるまちで生まれた。

いなかの中でも町はずれ。わたしと同じ年に生まれた子どもが、ぜんぶで100人しかいない、というすごくいなかの町。

ゆいいつの『かんこうめいしょ』である「こぶかりいしてんぼう台」は、夏はじてんしゃですぐ、あるいても1時間あれば行けるので、テレビがない場所でくらしていたわたしは、ひまつぶしにまいにち遊びにいっていた。


日の出を見て、しおかぜをあびて、おわりが見えない「ちへいせん」をながめ、ざあざあひびくしおさいを聞く。白いなみをみているだけで一日がおわっていた日もある。

だんがいぜっぺき、というやつで、じめんのはしっこまでいくと、すぐ下はきりたったゴツゴツした岩がたくさんならんで、おおきな木と草がいっぱい生えている。すこしすなはまが挟まってから、どこまでもつづく海が目の前いっぱいに広がっている。

うっかり下におちたらしんじゃうんだろうな。

こどものわたしでもわかる。

海をながめているだけでつまらなくない?と近所のお友だちに聞かれたことがあるけど、いえに一人でいるよりもマシだ。


おとうさんはりょうし、おかあさんはくるまで1時間いじょうあるところの「はんかがい」にある「スナック」ではたらいている。

そのほうが、いなかのスーパーではたらくより「おかねがかせげて」、「さみしがりや」なおかあさんは、「スナック」がちょうどよかった。お客さんである「おとこの人」とおさけをのんでおはなしするおしごとだから、海にでて長く「お家にかえってこない」おとうさんのかわりにするにはちょうどいいみたい。


おうちに一人でいることがおおいから、わたしも「さみしく」て、おかあさんに「なんでわたしが生まれたの?」ってきいてみたくなることがある。

でも、おひさまがのぼる頃におうちにかえってくるおかあさんは、気づいたらお酒のニオイをさせてよこにねているので、ぜんぜんそんな時間がない。


わたしは、もっとおかあさんにあそんでほしいんだよ?

だから、海にいる「おともだち」にいっしょにあそんでもらっていた。



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